2024/02/16|1,508文字
<雇用の定義と特徴>
雇用とは、労働者が使用者に対して労働に従事することを約し、使用者がその労働に対して報酬を与えることを内容とする契約のことです。
雇用には期間の定めのない正社員や限定正社員、期間の定めのある契約社員やパートタイム労働者など、さまざまな形態があります。
もっとも、「正社員」「契約社員」といった用語は、法律用語ではありませんから、その定義は各企業の就業規則などに委ねられています。
雇用には、労働基準法、労働契約法、労働安全衛生法、最低賃金法などの労働法が適用され労働者が保護されています。
<業務委託の定義と特徴>
業務委託とは、企業が自社の業務の一部や全てを外部の企業や個人に依頼することです。
「業務委託」は法律用語ではないため、明確な定義はありませんが、その多くは請負契約であり、委任契約のこともあります。
請負契約は、業務の成果物に対して報酬が支払われる契約で、委任契約は、業務の遂行に対して報酬が支払われる契約です。
企業の契約の相手方である請負人や受任者は、個人事業主扱いとなりますので、労働法が適用されません。
<雇用と業務委託の法的な区別基準>
雇用と業務委託の区別基準は、契約書のタイトルのような形式によらず、契約の実態における「使用従属性」の有無によって判断されます。
使用従属性は、以下の2つの要素からなります。
・指揮監督下の労働であるか
・報酬が賃金として支払われているか
指揮監督下の労働であるかどうかは、仕事の依頼や業務従事の指示に対する諾否の自由の有無、業務遂行上の指揮監督の有無、勤務場所や勤務時間の拘束性の有無、業務提供の代替性の有無などを考慮します。報酬が賃金として支払われているかどうかは、報酬の額や計算方法、支払時期などを考慮します。
使用従属性があれば雇用契約、なければ業務委託契約と判断されますが、これらの要素は一つ一つでは決定的ではなく、総合的に判断する必要があります。また、契約書の記載内容だけでなく、契約の実施状況や業務の性質なども考慮する必要があります。
<雇用と業務委託の具体的な区別基準>
雇用では、事業主(会社)の指揮監督下で労働が行われます。事業主の業務指示を受けて業務を行うということです。この業務指示は、正当な理由がなければ断ることができません。拒否すれば、懲戒処分の対象となることもあります。
また雇用契約では、労働者自身が業務を行います。誰かに代わってやってもらうことはできません。ですから雇用契約では、能力や経験、人間性等を慎重に判断して採用するのです。
一方で、業務委託では、注文者や委任者が仕事の完成に対して、一般に出来高制や歩合制で報酬を支払います。雇用契約のように、時給や日給、月給で支払うということはありません。
仕事の進め方や時間配分等の細かな指示はありません。始業・終業時刻や休憩時間の定めはなく、自主性・独立性・裁量性をもって業務にあたります。最終責任は本人が負うのですが、誰かに代わってやってもらうこともできます。
<雇用と業務委託の区別を巡るトラブル>
こうした具体的な区別基準によっても、実態として、一部は雇用、一部は業務委託に当てはまることがあります。
「業務委託契約書」を交わしていても、自分は労働者(雇用)であるとして、未払残業代等の支払いを求めたり、労災保険の適用を求めたり、年次有給休暇や産休・育休の取得を求めたりということが増えています。
労働者(雇用者)の働き方が多様化する中で、雇用と業務委託の線引きが難しくなっていますし、フリーランス保護法の施行も控えています。
企業としては、社会の動向を注視しつつ、雇用契約と業務委託のどちらを選択するか、慎重な判断が求められています。